人生最後の?進水式に向けて、キーホルダー造りも追い込み。記念エッチングプレートの制作はなかなか思うようにいかない。テストのお二人さん、ごめんなさい。このトライアンドエラーがあって、徐々に完成形に行き着くんだから。先輩の通夜の時間が迫ってタイムアップ。
久しぶりにネクタイを締めて昔なつかしい先輩宅へ向かう。
その先輩には研究会で大変にお世話になった。その研究会は、全く私的で自発的な会だった。全てが手弁当、時間もお金も供出したがその代わり得るものは大きかった。今はそういう時代じゃないのだろうか。民間教育研究会が消滅していくのは寂しい限り。今でも思い出されるのは、その先輩宅に2泊3日の合宿をしたこと。それも休暇中ではなく、通常の学期の真っ最中にだ。今だったら信じられないことである。それをしたからって何の得にもならないのだがそういう損得勘定抜きに、やることが楽しい時代だった。
歳をとるとそういう元気が湧かず、淋しい限り。その短期合宿中に面白いエピソードがあった。編集作業をしていて深夜になった。いっぱい飲もうということになり、私が酒屋の自販機へ走った。あれ〜!夜間は販売禁止であった。今では深夜営業のコンビニが当たり前のようにあるが、当時は夜間は自販機のみが頼りだった。それも一定の時間帯を過ぎると自動的にアウト!困った先輩は台所を探しまわるが、あったのは料理用の日本酒だけ。それを二人でちびちび舐めながら過ごして、夜明けに原稿は完成。ひと寝して出勤という有様だった。台所の料理酒しか出せなかったことを先輩はひどく気にしていて、いつかうまい酒を飲みにくるよう言われていたのだが・・・
約束は先伸ばししてはいけないのが人生の常だが、またままならぬのも人生。通夜は大勢で騒がしいとみて、行きがけにつまみもとらずたったいっぱいの日本酒を先輩を偲びながら飲んだ。さて、今では珍しいご自宅での葬儀。アトリエが待ち合いだった。特徴のある字体で描かれた句が数点。あっと思わず声が出てしまった。一気に十数年のタイムトラベラーとなった。
「海に出て木枯らし帰るところ無し 誓子」
私が強く惹き付けられた詩だった。奥様は件の日本酒の件と併せてそのことを良く覚えていてくださっていた。悲しいはずの再会だったが、思わず頬の緩む出来事に出会った。
3月30日の出来事。
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