
正月2日は、自分の誕生日。干支を一回りした次の歳なので人生終盤の1歳目ということになる。こういう日はセーリングしなくてはと計画を立てるが付き合ってくれる方は極めて稀なり。初日の出を洋上で見るのが恒例だったのは昔日の夢物語か。それでも有難い友人が2名、この寒空におつき合いしてくださった。コースはいくつか考えたが、葉山までのミニクルージングと決定。準備万端なるも抜け多し。一番重要と思われる携帯式ストーブを忘れたと気がついたのは、既に多摩川を渡ってから。時既に遅し。今回はレースではないので、気楽に乗ろうと、ヨットに乗る前にやる儀式は全て省略。その儀式とは、まずは爪を切ることから始まり、セーリングギアの準備、お守りブレスレットの装着などなど。セーリングシューズも当然置いていったが、寒いといけないのでクロックス長靴、合羽の下のみ、冬用グローブだけはもつことにした。この時点から海を甘く見ていたことが解る。

後輩のM氏と最近濃いお付き合いのTO氏がこの冬空におつき合いくださった希有なお友達。出航準備を済ませ、いつもの様にハーバーで手続きを済ませるが、今日に限って天候の予報が出ていない。きっと予報会社も正月休みだったのだろう。予報は北の風8mだが、相模湾は、北へ行くほど風が落ちるので、辛いのは最初の1時間と読み出航。海へ出ると白い波がぽちぽちと。遊びで行くので迷わずワンポイントリーフ。ここでも少しトラブル。手順のコンビネーションが悪く、フィッティングも不十分。ここでも第二の問題点が暴露。でも、なんとかなるだろうという甘い気持ちで沖へ。ジブの展開で、また一悶着。これもフィッティング確認の甘さ。まだ三人と船のマッチングが充分でなく、マイナートラブルが次々と。でも、このときはまだ風速18ノットぐらいだったので、全員が辛いけれど葉山まで行くという気持ちに何の揺らぎも無かった。
網をかわしたころから風が上がる20,25,30と。小網代の吹き抜けだろうと楽観。亀城を越せば楽になると自分にいい聞かせるが、大島の上には不穏な黒雲。前線の発生だろう。江ノ島方向は明るいので、ちょっと持ちこたえればと考えていたが、海はそれほど甘くなかった。35ノット!限界を感じメインダウン。ジブを50%ぐらいまでファーリング。ストーム1枚といったミニマムリグとなった。このころは上せるはずもなくアビーム流し、行き先は伊東方向。ここで上のジブシートが外れているという重大なトラブル発見。自分が付けにいくが、この体重は船を更にヒールさせ、船のコントロールが難しくなるので一旦コクピットにバック。3人の中では軽量、長身のM氏にハーネスを着けてもらってバウをお願いし、ヘルムにポジション交替。とにかく安定して走らせようと波を除け除け船を進める。ハーネスを着けたM氏、なかなか前へ行かない。後で聞いたら心のシフトチェンジをしていたとか。沖に行けばもっと波が悪くなりそうなので、促すと一歩一歩慎重に前に這って行く。ジブシートを通す時に海側から通すか、船側から通すか、しばし悩んでいたが無事に装着終了。待ちかねたタッキング、無事に船は周り陸の方向へ。進行方向は佐島。葉山までの半分ぐらいまでは来ていたが、波頭の上を砕け散る風紋を見て、上へ上るのはもう限界と判断。壺へ逆戻りを決める。小さなジブ1枚でも艇速は5から6ノット。風速は一旦25ノットまで落ちたが、また30ノットオーバー。このとき、やっと写真を撮る余裕が出た。壺の入港よりも、三崎への入港が簡単と考え、さらに5度下す。走り安い角度で良かったが、追手だったら、まず走れ無かっただろう。天はまだ味方をしていてくれたのだ。

その後もいくつかドラマはあったが、無事に三崎港に着岸。マグロの吹き流しが大きく波打ちながら泳いでいた。まだまだ外は吹いていそう。

無事の生還?を祝いバーボンで乾杯。M氏は交渉術の天才で、潮まみれのオイルスキン上下で、よろよろしながら風呂の交渉に行ってくれた。475円とは思えない展望絶景の夕焼け風呂。
生きていて良かったという実感が、暖かさを伴って爪先から頭のてっぺんまで一気に駈け登ってきた。間一髪!
誕生日と命日が一緒という事態になりかねないセーリングを振り返る。
命を預けられる貴重な仲間に乾杯!
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